スペクトラムしい日々

自閉症スペクトラムの娘と家族、母の日常をゆらゆらと書き綴ろうと思います

おでんくーん! (発表会パート2)

総練習を観に行きました。
 
観に行くだけならいいと言っていたのに、時間が近づくとやはり「行くの面倒くさい」などとしぶり始めるので、「いいじゃん、観るだけなんだから。ほら、なかなか自分が出る劇を客観的に観る機会ってないじゃない? それはそれで面白いかもよ」何となく明るいトーンで盛り上げてみる。
何でもいいんだ、学校に足を運んでくれるなら。
 
娘の劇は午後いちだったので、それに合わせて体育館にそっと入りました。
体育館の1番後ろの隅のほうで、ひっそり座ると「やっぱり帰りたい」
な、なんだ?  別にジロジロ見られてるわけでもないし、出演しろって言ってないし、黙って観てるだけだよ。
「せっかく来たんだから観終わってから帰ろうよ、終わったらすぐ帰ろう」
娘は何だか落ち着かない様子で、ステージにろくに目も向けず体をモジモジさせて、堰を切ったように呟き出す。
 
「この世界は思ったよりつまらない」
「わたしにとって楽しいことが何もない」
「隕石が落ちてこの世界がなくなってしまえばいい」
「わたしの上に隕石が落ちてくれればいのに」
 
 
この世界ってなんだよ・・・ミカサかよ・・・
 
 
あなたにとってこの世界は何の魅力もない世界なんだね・・・
この世界はこんなにも美しい風景や
美しい音楽にあふれているのに、あなたはこの世界を拒むんだね、なくなってほしいと願うんだね・・・
 
そう思うと、合唱の音響効果もあって、目が潤んできてしまう。
 
 
わたしは何をやっているんだろうね・・・
 
 
 「この世界はつまらないんだー」
「楽しいことがなかったんだね、ずっとつらかったんだね」
「一緒にやりたいことを探してみようよ」
 
そう返すのが精一杯。
 
家に帰ってからは、お互い何も話さず、娘はパソコンに向かい、いつものように楽しそうに眺めている。
わたしは涙をふきふきおでん作り。
 
おでんでんでん、おでんでんでん。
 
 
おでんくん、助けてくれよぅ。
 
 
そして翌日。用事が入っていたので、どっちにしても学校には行けません。
「おでん食べる?」「うん」
遅めの朝ごはんを食べながら、
「練習、大変だった?」
「うん」
「そっか、でも1日1時間だったけど、頑張ったよね」
「・・・」
「あなたはこの世界でも頑張れるよ」
「・・・」
「だから、自信もっていいんじゃない?」
「・・・・・」
涙を拭いているようだ。
 
母の言葉が、どのくらい娘の心に響いたのだろう。
おでんくんは娘の体の中に入っていって、娘のココロと向かい合ってくれただろうか。